ホワイトペーパーは企業が製品の価値を伝える貴重なツールとして、多くの業界で利用されています。
しかし、「ホワイトペーパーを作ったは良いものの、成果が出なくて困っている」といった悩みを抱えている企業は少なくありません。このような場合、マーケティングの視点でホワイトペーパーを作成できていないことが原因であることが多いです。
本記事では、ホワイトペーパー作成時に陥りやすい失敗や、成果の出る資料作成のコツを詳しく解説します。※この記事はアドビ社のPR企画「みんなの資料作成」に参加して執筆しました。
ホワイトペーパーで成果を出すにはマーケティングの視点が必要
ホワイトペーパーで成果を出すためには、デザイン面とマーケティング面を両立する必要があります。成果が出ないと悩んでいる企業様の多くは、実はマーケティングの視点が抜けている場合があります。
ホワイトペーパーの定性指標を「デザインの良し悪し」にしている企業が多い
一般的にホワイトペーパーの目的は、自社や自社製品の魅力を知ってもらい、問い合わせなどの更なるアクションを起こしてもらうことです。
そのため、多くの企業が資料ダウンロード数や資料閲覧後の問い合わせ数などを評価指標として考えます。そして、このような定量的な指標を左右する定性的な要素には「内容が有益か」「わかりやすいか」「訴求力があるか」などが挙げられます。
多くの企業が陥る失敗は、このような定性指標をすべてデザインの良し悪しで考えてしまう事です。
ホワイトペーパー経由のお問い合わせ数
マーケティング視点が抜けたホワイトペーパーは企業イメージにも関わる
デザインに注力し、マーケティング視点の抜けた資料を作成すると、表面的な内容ばかりになったり、独自性に欠けたりしてしまいます。
その結果、新しい情報やまだ知らない有益な情報を求めてダウンロードしたユーザーの期待を裏切る結果となり、思ったような成果が上がりません。
また、デザインがそれっぽいホワイトペーパーは、デザインやフォーマットが整っており、一見良いもののように見えるため、社内のだれも問題に気づかず公開されてしまうことがあります。
そして、内容の薄いホワイトペーパーを公開してしまったことで、企業のイメージや価値が落ちるなど、目に見えない損失も考えられます。
デザインとマーケティングは相互に関係している
ただし、ホワイトペーパーにおけるデザインとマーケティングの考え方は、相互に関係しており、完全に分けることができません。そのため、どちらを重視すべきという優先順位もありません。
例えば、ホワイトペーパー内の文章レイアウトを行う際、フォントサイズや色、他のオブジェクトとの位置関係など様々な事を考えます。これらは一般的にデザインと呼ばれることが多いですが、このデザインはホワイトペーパーの目的やターゲット、訴求内容によって最適なものが変化します。
ホワイトペーパー作成が成功しない原因
ここでは、ホワイトペーパーの作成が成功しない2つの原因を解説します。
先ほどもお伝えしたとおり、ホワイトペーパーで成果が出ない企業様の多くは、マーケティングの視点が抜けている場合があります。なぜホワイトペーパー作成時にマーケティングの視点が抜けてしまうのか、具体的に見ていきましょう。
参考資料の意図をくみ取れずデザインばかりに注力してしまうから
特に多いのは、有名な資料を参考にしながらホワイトペーパーを作成したが、参考資料のマーケティング視点での意図がくみ取れず、デザインだけに注力したホワイトペーパーになってしまうことです。
参考元の資料がデザイン面・マーケティング面の両方で優れていたとしても、それをくみ取れなければ良いホワイトペーパーを作成することができません。
「デザインができるマーケター」もしくは「マーケティング視点を持てるデザイナー」が多くないから
「デザインができるマーケター」もしくは「マーケティング視点を持てるデザイナー」が多くないことも原因の1つです。
社内でホワイトペーパーを作成する際、担当者が企画を考え、デザイナーにデザインを依頼することがあります。この際、デザインができるマーケターであれば、マーケティング面で設計された企画案を、デザイナーへ適切に依頼できます。
一方、マーケティング視点を持てるデザイナーであれば、マーケターの意図をくみ取ったデザインを行うことができます。
しかし、そうでない場合は、正確に意図を伝達しホワイトペーパーに反映させることが難しいです。
自社が伝えたいこと中心の内容になってしまっているから
自社の製品やサービスのメリットが過度に強調され、ホワイトペーパーという形式を取りながらも、実質的には広告などと変わらない内容となってしまうことがあります。
これは、マーケティング視点を持って作成する際には当たり前の考え方である「ユーザーニーズから逆算して考える」ができていないことで起こります。
特に、ホワイトペーパー作成に複数人が関わる場合は、様々な意図が交錯し、ただ伝えたい情報を詰め込んだ状態になってしまうことが多いです。
このようなホワイトペーパーをダウンロードしたユーザーは、「情報量が多く、結局何を伝えたいのかわからなかった」「訴求が多く、課題解決の情報が見つけられなかった」と感じるでしょう。そして、サービスの検討を中断したり、他社の資料を閲覧しに行ったりしてしまうのです。
デザイン面・マーケティング面の両方で優れたホワイトペーパーを作成するコツ
ホワイトペーパー作成時に重要なポイントを押さえた上で作成すると、成果が出やすくなります。
今回は、デザイン面・マーケティング面の両方のプロでなくても優れたホワイトペーパーを作成するために、弊社で実際に行っている流れやポイントを解説していきます。
また、弊社の資料一覧ページ・ダウンロードページも併せてご参考ください。
サイトエンジンの資料一覧ページ
ホワイトペーパー制作代行サービス資料ダウンロードページ
課題・目的を明確にする
まずは現状のマーケティング課題を明確にします。そして、その課題の中から、ホワイトペーパーが解決できる部分を洗い出せば、自然と目的が決まります。
実は、弊社にご相談いただくホワイトペーパー作成のご依頼の中には、ご共有いただいた課題が「そもそもホワイトペーパーの作成で解決できない」ということも少なくありません。
そんなときは、課題の整理からお手伝いさせていただくこともあります。
以下で主なホワイトペーパーの分類を詳しく説明しています。
ホワイトペーパー13種類と使いわけの方法
目標を明確にする
課題・目的が明確になったら細かい数値目標を立てます。
まず「ホワイトペーパー経由のお問い合わせ数10件」のように一番大きな目標を決定します。これは目的を決めた時点である程度定まっていることが多いです。そして、その目標を因数分解して、中間の目標を立てていきます。ここでの一番大きい目標をKGI、中間の目標をKPIと呼びます。
ポイントは、目標を分解していくときに、漏れやズレがないようにすることです。このために下図のようなKPIツリーと呼ばれるものを作成します。ツリー上に可視化することで、理解しやすくなり、漏れやズレを防ぐことができます。
因数分解した内容は、この後説明する導線設計にも役立ちます。現状を整理しつつ目標を決めていきましょう。
Webサイト経由でのホワイトペーパー目標設定の例
導線設計を行う
ホワイトペーパーがダウンロードされるかどうかは、ホワイトペーパー自体の良し悪しよりも、ダウンロードフォームやフォームまでの導線に影響されることが多いです。
導線設計は、目標設定のために数値を因数分解していく中で、現状のどの導線を活用できるか、どこに改善ポイントがあるかを確認するものです。
課題を洗い出す際、導線についても整理しますが、導線の改善を考慮した上でホワイトペーパーを作成できている方は少ないです。
弊社にご相談いただいた中で、導線を改善しないと成果が出づらい状況にもかかわらず、ホワイトペーパー作成を進めてしまった事例をご紹介します。
- 自然検索経由のダウンロード数を数値目標としてしまったが、そもそも自然検索からの流入が多いブログからダウンロードフォームへリンクを貼る予定がなかった
- ホワイトペーパーの表紙にこだわったが、ダウンロードフォームにホワイトペーパーの紹介文や表紙画像を載せる場所がなかった
このように「現在の導線のまま、とりあえずホワイトペーパーを作成して、月間100ダウンロード達成したい」というような目標にならないように気をつけましょう。
企画案を作成する
企画案作成では、目的・目標をもとにターゲットを決め、ホワイトペーパーの大まかな概要を考えていきます。
実際に弊社で企画案を作成する際の項目は以下です。
- テーマ
- タイトル
- 読み手のイメージ(ターゲット・ペルソナ)
- ホワイトペーパータイプ
- 課題解決=ノウハウの伝達
- 知識の獲得・情報収集
- サービスの紹介
- 原稿タイプ
- ポイントのみを端的に書いたスライド資料
- スペースを広く使い文字を少なめにした初心者向けの読み物
- 1ページの文字量が多めのしっかりとした読み物
- 文字だけのホワイトペーパー
- ストーリーライン
例)法改正への対応についてのお役立ち資料
- ○○の問題を提起
- 法律により対応が義務化したことを説明
- 放置した場合のリスクと必要な対策を説明
- 対応の方法を具体的に説明
- 自己解決できない方のために相談サービスを紹介
- サービスを利用した方の事例を紹介
- 記事概要
- 参照になるサイトやその他注意点
ポイントは、「ホワイトペーパータイプ」「原稿タイプ」のように作成するホワイトペーパーの型をいくつか用意しておくことです。多くの選択肢がある中で、自分で1からすべて考えようとすると、なかなか上手くいかないので、大まかな概要を作ってから、詳しい内容を書いていきます。
また、共通のフォーマットを使用して整理することで、デザイナーに情報共有する際もわかりやすくなります。記事概要には、ここまでの内容を文章ベースで簡単に要約します。
記事概要や参考サイト、注意点を見た時に自分の意図が伝わるか確認しましょう。記事概要が上手く作成できない場合は、ストーリーラインで作成した各ページに対して想定されるユーザーの心理状態を考えるジャーニーマップを作成してみましょう。
ジャーニーマップの例
複雑な商材、金額が高い商材を扱う場合など、アクションを起こしてもらうまでのハードルが高い場合は、ユーザーを深く理解したうえでホワイトペーパー作成をする必要があるので、より具体的なジャーニーマップを作成することもあります。
カスタマージャーニーマップの目的と作り方[動画解説あり]
構成案を作成する
構成案は、企画案をもとに各ページや見出しの内容の概要を決めたものです。各見出しの内容を書く際は、基本的に箇条書きでポイントや入れたい内容を書いていきます。
文章作成やデザインを他の人と共同で行う場合は、共同作業者に向けて考えていることなどをコメント風に入れていきます。例えば構成案を作成する際、考えた文章を一言一句そのまま使ってほしい時には箇条書きではなく文章で書き、更にそのまま使ってほしい意図を書きます。
また、参考となるサイトや挿入したい画像、見出しごとに想定している文字数も整理することでイメージの共有がしやすくなります。
構成案の例
弊社では企画案・構成案を作成した担当者が、大まかなホワイトペーパーのイメージまで作成することをおすすめしています。基本的な配置と文章量、どのような導線をイメージしているかがわかれば問題なく、特別なデザインの技術が必要なわけではありません。
また、共通認識を持つためのアウトプットなので、文章や画像が正確に決まっている必要もありません。弊社ではこれを「レイアウト台割」と呼んでいます。
多くの場合はデザイナーが構成案を受けて、レイアウト台割よりもある程度デザインされたアウトプットを出します。ただ、デザイナーが作成をする前に担当者がレイアウト台割を作成することで、構成案の意図が十分に伝わり、ズレが起こりにくくなります。
レイアウト台割の例
見落としがちな重要ポイントは「商材の理解」
デザイン面、マーケティング面以外にも、重要かつ見落としがちなポイントが1つあります。それが商材の理解です。
自社の商材を理解しているマーケターがホワイトペーパーを作成する時以外は、基本的に以下の場合が多くなります。
- 自分がホワイトペーパーで扱う商材のプロだが、作成のプロではない場合
- 自分はホワイトペーパー作成のプロだが、扱う商材のプロではない場合
デザインとマーケティングの関係と同じで、この2つも互いに影響し合う重要な要素です。どのような場合でも、自分の担当ではない領域に関しては認識のすり合わせや細かなフィードバックの場を設けることが重要となります。
弊社は、ホワイトペーパー作成のプロとしてお客様の制作をお手伝いさせていただいています。商材やターゲットに関しては連絡を密に取り、ミーティングを経て、「ユーザーが知りたいこと」と「商品提供側が伝えたいこと」のバランスを見ています。
また、企画案の作成段階から複数人が関わる場合は、内容がまとまりにくくなります。
弊社では上記を実現するため、関係者との連絡手段や使用するツールなどにも気を遣っています。気軽に使えるものかどうかで無意識に連絡頻度やフィードバックの質が変わることがあると考えているからです。
例えば、可能であれば連絡手段はメールよりもチャットツールの方がおすすめです。
私の経験上、チャットツールの方が連絡を密にとることができ、より良いものができやすくなります。
関係者との意思疎通に活躍するAdobe Acrobat オンラインツール
最後に、ホワイトペーパーを作成・共有する際に、関係者との意思疎通を図るツールとしてオススメのAdobe Acrobat オンラインツールをご紹介します。
ExcelをPDFに変換
構成案を作成する際はExcelで作成することが多いですが、お客様やチームへ共有する際、内容やセルの幅を変更してほしくない場合があります。そんな時はPDFに変換してから共有することが多いです。
PowerPointをPDFに変換
ホワイトペーパー作成はPowerPointで行うことが多く、そのまま共有すると、環境によってはレイアウトが崩れてしまう可能性があるので、共有の際はPDFへの変換がおすすめです。
PDFを編集(コメント追加)
Acrobat オンラインツールなら、クラウド上で複数人でPDFにコメント可能です。そのため、チャットツールでコメントを送ったり、わざわざ変換してからコメントを入れて返したりする手間を省くことができます。また、フリーハンドで描画も入れられるので、画像への細かい指摘を入れやすいのもポイントです。
PDFの保護(暗号化)
公開前の機密情報が含まれるホワイトペーパーを共有する場合など、PDFファイル自体の閲覧に制限をかけたいことがあります。そんな時は、PDFにパスワードを設定しておくとセキュリティ面でも安心できます。
まとめ
ホワイトペーパーの作成は、商材や自社の魅力を効果的に伝える手段として非常に重要です。
作成時にはマーケティングの視点が抜けやすいので、企画案ではターゲット、構成案ではニーズやストーリーラインを考えることで、読者にとって魅力的な内容を提供しましょう。
ポイントは商材を深く理解すること、ユーザーが求める情報と提供者が伝えたい情報のバランスを取ること、関係者との効果的な情報共有の方法を模索することです。
今回は、効果的に情報共有を行う手段として、「Acrobat オンラインツール」を紹介しました。適切なコミュニケーションツールの使用や連絡の最適化は、質の高いホワイトペーパーを作成する上で必要不可欠です。
マーケティング視点でのデザインノウハウと関係者間の密なコミュニケーションを組み合わせて、ユーザーにとって有益なホワイトペーパーを作成しましょう。
▽作成後の活用方法についての記事はこちら
ホワイトペーパーの作り方・活用事例を解説【デザインサンプルあり】
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