以前は入社したばかりのメンバーから『何をどこまで学べばいいのか分からない』という声がよく上がっていました。デジタルマーケティングは範囲が非常に広く、新しい概念やツールも次々生まれます。すべてを完璧に身につける必要はありませんが、全体像を把握しておくだけでも、より的確な施策を選ぶうえで大きな強みになります。
ただ以前は、先輩社員が個別にOJTで教えるスタイルが主流でした。誰が何をどこまで教えたのかが把握しづらく、先輩からすると『まだそれを知らなかったの?』という場面がたびたび起きていたのです。
そこで、『単発的に教えるだけでは限界がある』と痛感し、私たちは社内研修をしっかり整備しようと決めました。そうして、さまざまな方法を試行錯誤しながら、今のスタイルにたどり着いたのです。ここでは、私たちが大切にしている研修の全体像や運用方法について、実際の経験を交えてご紹介します。
研修体系を整えようと思ったきっかけ
OJT中心だと教える項目のぬけもれが発生
以前は、「入社した新人が現場の先輩にその都度学ぶ」というOJTを中心とした育成方法をとっていました。業務に直結しやすいメリットはあったものの、教える内容が直近の業務に関連したものだけになってしまい、一部の要素を学ぶタイミングを逃してしまうことがありました。入社して数カ月経ったころに先輩社員が知っている前提で説明した部分を新人が理解しておらず、教える側も教わる側も戸惑う…というような場面がありました。
また、入社したばかりのメンバーがお客様と打ち合わせしたときに、先輩がフォローしないと話が食い違ってしまうケースもあり、これではさすがにまずい、という危機感が教育のやり方を見直す大きなきっかけになりました。
目の前の業務に関連していない研修を足して体系だって学べるように
最初は、SEOやコンテンツ制作を中心とした研修プログラムを用意してみました。たとえばキーワード選定や記事作成を実際に体験することで、制作の流れを理解できる利点はあったのですが
- 目標設計やプロジェクトの進め方など基本のビジネススキルが身についていない
- お客様の業界についての知識が浅い
- デジタル領域以外のマーケティングや経営、ビジネスモデルの理解が欠けている
といった問題が、浮かび上がってきました。
「私たちが本当に育てたいのは、テクニックだけを知っている人材ではないはずだ」と改めて気づき、「ビジネス基礎/ITリテラシーから各業界の知識まで含めた総合的な研修体系を作ろう」という方向に進めることにしました。
現在の研修体系と運用方法
経営理念・バリューを軸にした基礎研修を入社後に実施
まず最初に、新入社員には、経営理念やバリューを共有する入社後研修を受けてもらっています。経営陣が直接、「会社として何を大事にしているか」「どのような価値観をもとに事業を進めているか」を説明することで、業務を「ただの作業」としてではなく、会社の目指す方向と結びついた行動として理解しやすくなります。
あわせて、会社のルールや働き方を学ぶ研修も同時に行い、ここで覚えてほしいポイントを研修担当者が確認しながら進めるため、抜け漏れを防ぎやすい仕組みになっています。
デジタルマーケティングやIT領域だけではなく財務会計なども用意
当社の研修プログラムは大きく分けると、以下のような領域をカバーしています。すべてを一度に詰め込むのではなく、座学→実践→フィードバックというサイクルで学べるよう工夫し、必要に応じて週次の研修や勉強会も取り入れています。
- ビジネス基礎スキル
ビジネスマナーや社内外へのコミュニケーション、お客様対応の基本、KGI/KPI設計、スケジュールや段取りの組み方など - マーケティング関連
STPや4Pといった基礎から、SEOやコンテンツマーケティング、キーワード選定・記事作成の実践トレーニングまで - ITリテラシー
オフィスソフトなどのPC操作やクラウドサービスの使い方、CMSやサーバー設定の基本など - 業界知識・経営戦略
お客様の業界構造を理解し、提案に活かすための知識や、マーケティングを広い視点でとらえる方法 - 管理職向け
プロジェクトマネジメントや財務会計など
このように領域が多岐にわたるので、何かを学んだらすぐ小さな実践に移り、日次の社内会議で疑問点を解消するというペースで、段階的に習得していくのが特徴です。
すべての研修メニューは以下の画像のように研修資料のURLとともに一覧化されていて、誰がどの研修を受ける予定なのか、研修ごとに誰が講師を担当する予定なのか、完了済みかそうではないかがわかるようになっています。研修資料のURLには過去に同じ研修が実施された際の動画も貼り付けしてあるため、復習できるようになっています。
画像上に新入社員の名前、項目ごとに教える人の名前を記載して、進捗を管理しています。

ITリテラシー強化の一例:ミニサイト立ち上げ研修
座学で学ぶだけではなく、実践してみることが大切だと考えているため、手を動かす研修も実施しています。
たとえば、ドメイン取得、クラウドサーバー(GCP)の契約、ネームサーバの設定、WordPressのインストール、SSL設定、GoogleタグマネージャーやGA4やサーチコンソールの設定など、サイト立ち上げまでを一通り体験する研修を実施しています。
こうした体験を伴う研修は、新入社員のITリテラシーを底上げするうえで有効だと感じています。細かい契約手続きやサーバー設定の基本を実際にやってみることで、デジタルマーケティングに関連したインフラの基礎知識も一緒に身につけられるのです。
導入時は「新人にそこまで必要かな?」という声もありましたが、運用してみると、新入社員がお客様と各種設定についてきちんと説明できるようになる効果がありました。画面共有を使った丁寧な指導や、週次勉強会でのフォローによって、受講者が途中でつまずかないようバックアップ体制も整えています。
研修成果をどう測定するか?
テスト・チェックシートで理解度を可視化
研修を受けるだけでは、本当に身についているかが見えにくいため、テストやチェックシートによる可視化を導入しています。たとえば、サイトエンジンの主な業務であるSEOやデジタルマーケティングなどの主要用語を説明できるか、記事作成の業務フローを理解しているかなど、研修内容に沿った項目をリスト化して「どの程度習得しているか」を明確にしています。
以下のような業務内容ごとの評価を1人1人が自己申告でつけ、不足している部分を追加で学習するようにしています。

画像ではわかりにくいと思いますが、以下のようなおおまかな評価基準を項目ごとに用意しています。
1.誰かに細かく作業指示をしてもらわないと何をしたらいいかわからない。
2.手順はわかるが、ツールの使い方などあやふやな部分があり、一人ではすすめられない。
3.作業的な部分は進められるが、考察が他社に出せるレベルに達さない。
4.考察はできるがクライアントへのプレゼンができない。
5.業務に慣れており、他者を指導するレベル。
自社でラクテスというテストを作成するサービスを運営していることもあり、デジタルマーケティングや情報セキュリティなどの社内教育向けのテストを複数作成して運用しています。
たとえば以下のような内容のテストです。

これによって、受講者本人も「いま何が足りないのか」をつかみやすくなり、研修担当者やメンターもフォローアップの優先度を判断しやすくなりました。
フォローアップと週次の研修・勉強会での補強
テストやチェックシートだけで拾いきれない悩みを解決するため、メンター制度を導入し、定期的な面談で学習状況や業務の進捗を確認しています。個人によって得意・不得意はさまざまなので、一律の研修では補いきれない部分をフォローするイメージです。
また、週次の研修・勉強会は意外と効果が大きく、講師や先輩社員がミニレクチャーを行ったり、受講者が疑問に思ったことを気軽に投げかけたりすることで、思わぬノウハウ共有が進む場合も多いです。短いスパンで学習と実践を繰り返すことで、独りで抱えこまずに学べる環境を作っています。
都度のアップデートと新テーマへの対応
研修資料は、新しいツールが登場したり、新入社員が入ったりするタイミングで見直しを行っています。特にAIツールや最新の分析手法など、ここ数年で急激に注目されている技術については、導入だけでなく「実務にどう落とし込めるか」を検証しながらアップデートし続けています。
さらに、マーケティング領域以外にもマネジメントや財務会計といった「どこでも役立つスキル」の研修も一部存在しており、少しずつ領域を広げています。今後は、各研修の効果を検証しながら本格的なカリキュラムに組み込む予定です。
まとめ: 常に内容をアップデート
かつてはOJT頼みだった当社の育成方法は、偏りや抜け漏れに悩まされてきました。そこから、経営理念やバリューを共有する入社後研修や、多角的に学べるプログラムを整備し、テストやチェックシートで理解度を可視化する仕組みを作ったり、ミニサイト立ち上げのような実践型の研修を導入したりと、試行錯誤を重ねて今の形に落ち着いています。
デジタルマーケティングの世界は日進月歩なので、新しいツールや技術が出るたびに、私たちも研修内容を見直して現場で使えているかどうか検証を続けます。完成することはなく、アップデートし続けることが必須だと考えています。
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