人材紹介会社では広告や求人検索エンジンによる集客が主流ですが、競争の激化により、求職者と安定的な接点を持つ手段としてコンテンツマーケティングが注目されています。専門性や信頼性を活かし、自社の魅力を継続的に発信することが求められています。
本記事では、コンテンツマーケティングが必要とされる理由や設計方法、成功事例など人材紹介ビジネスにおける中長期的な集客基盤の構築に向けて、実践に役立つヒントをお届けします。
人材紹介会社にコンテンツマーケティングが必要な理由
求職者の情報収集行動が多様化するなかで、安定的かつ効果的に集客するためには、自社の強みを伝えながら、長期的な接点を築く施策が欠かせません。そこで注目されているのが、コンテンツマーケティングです。
▼コンテンツマーケティングの基礎は以下をご参考ください
コンテンツマーケティングとは?基礎知識から実践方法までを徹底解説
広告や求人検索エンジンに依存しないため
広告や求人検索エンジンは、かけた費用に応じて効果が見えやすく、短期的な費用対効果が得やすいことから、多く利用されているのが現状です。
しかし、これらの手法にはいくつかの課題もあります。たとえば、広告は一定のタイミングで費用対効果が横ばいになりやすく、徐々に成果が鈍化する傾向があります。また、求人検索エンジンはプラットフォーム側のルール変更やアルゴリズムの影響を受けやすく、自社の意図通りに運用しづらいというリスクも抱えています。
実際に弊社がご支援しているお客様の中には、「現状は広告で求職者を獲得できているものの、今後は自社チャネルから集客できる体制を築く必要がある」という危機感から、ご相談いただいたケースもあります。
中長期での集客安定を図るため
コンテンツマーケティングは、一度作成したコンテンツが資産として蓄積され、長期間にわたって検索経由の流入を生み出せるという特徴があります。これにより、広告費をかけ続けることなく、自然検索やSNSなど複数のチャネルから求職者との接点を持つことが可能になります。
また、求職者が自ら情報収集を行う過程で貴社のコンテンツと接触することで、信頼感や親近感を持たれやすくなり、エンゲージメントの高いリードを獲得できるという効果も期待できます。
自社の強み・専門性を十分に伝えるため
転職活動においては、求職者が複数の転職エージェントを比較しながら、「自分に合いそうなサービスかどうか」を判断しています。
株式会社Geeklyの20代から40代の578名を対象にした調査では「利用する転職エージェントを選ぶ基準」に対して以下のような回答結果が出ています。
1位:転職エージェントが自分の希望に特化している 28.5%
2位:コンサルタントの経験や雰囲気の良さ 20.8%
3位:求人数の多さ 16.1%
▼参考
株式会社Geekly「転職エージェントを選ぶ基準をアンケート調査!IT転職エージェントギークリーが選ばれる理由とは?」
実際に、「コンサルタント個別に設けている問い合わせフォームからの相談が増えている」というお客様の声もあり、求職者が「自分に合っているか」「信頼できるか」といった点を重視する傾向は、確実に高まっていると感じます。
また、「”職種名” 転職」など専門的な領域での検索結果では大手の転職サイトよりも該当する職種・業種を専門に扱うエージェントサイトの方が上位に表示されるなど、サイトのより専門性が重視される領域も多いため、求人とコンテンツの両方で専門性を十分にアピールすることが重要となります。
人材紹介会社が作るべきコンテンツの種類
コンテンツマーケティングに取り組む際は、目的やターゲットに応じてコンテンツを適切に組み合わせることで、より効果的な集客につながります。
今回は、コンテンツを「記事コンテンツ」と「記事以外のコンテンツ」に分けて全体像を整理しました。なかでも、求職者との接点を作りやすく、登録や相談につながりやすい代表的なコンテンツをご紹介します。
▼取り組むコンテンツの考え方は以下をご参考ください
Webコンテンツの種類と伝え方のフォーマット
記事コンテンツの種類まとめ

記事以外のコンテンツの種類まとめ

コラム記事
コラム記事は、転職を検討し始めた求職者と初期段階で接点を持つきっかけになりやすく、自社のサービス理解へとつなげる入口として機能します。
記事のテーマは、一般的な転職ノウハウから、業種・職種別の情報、年代やキャリアに応じた転職支援など、ターゲットごとの課題に寄り添う内容まで幅広く対応できます。
ただし、一般的な転職ノウハウに関する記事は競争が激しく、検索結果で上位表示を狙うのは容易ではありません。自社で大規模なメディアを運営していない場合は、自社の強みや専門性に基づいたテーマから着手することをおすすめします。
コラム記事の例
- 一般的な転職ノウハウ
- 初めての転職活動で押さえておきたい5つのステップ
- 履歴書・職務経歴書の書き方とよくあるNG例
- 面接でよく聞かれる質問と回答例まとめ
- 内定後にやるべき手続き・準備リスト
- 転職活動でよくある失敗とその回避法
- 業種・職種別
- システムエンジニア(SE)の仕事内容とは?
- 営業職の転職で企業が重視するポイント
- 建設業界の志望動機作成のコツ
- 管理部門(経理・人事)の転職で評価される経験とは
- 年代・キャリア別
- 20代のうちに転職を考えるべきタイミングとは
- 子育てと両立したい30代女性の転職活動術
- 30代前半でキャリアチェンジは可能?成功事例とポイント
- 管理職転職を成功させる3つのコツ
インタビュー記事
インタビュー記事は、リアルな声を通じて「信頼」や「安心感」を伝えるのに非常に効果的です。
実際に転職を成功させた求職者や、紹介先企業の人事担当者、社内のコンサルタントへのインタビューを掲載することで、サービスの具体的なイメージを伝えることができます。
また、コラム記事でサイトに訪れた方が次に読むことで潜在層のユーザーに対して会社やサービスへの興味を増幅させるコンテンツとしての役割を持ちます。
転職に成功した求職者へのインタビュー
転職を成功させた求職者のストーリーは、これから転職を考えている人にとって非常に参考になります。リアルなエピソードを基に紹介することで、エージェントとのやり取りのイメージが具体化し、安心して相談してもらえるきっかけになります。
- 転職を考えるようになったきっかけは何ですか。
- 転職活動中に感じた不安や課題を教えてください。
- エージェントとの面談で印象に残っていることはありますか。
- ご紹介した求人のどんな点に魅力を感じましたか。
- 転職後、働き方や気持ちにどのような変化がありましたか。
- 今、転職を考えている方にメッセージをお願いします。
求人企業へのインタビュー
求人企業へのインタビューは、求人票だけでは伝わりづらい企業の魅力や価値観を言語化するのに効果的です。現場のリアルな声を発信することで、求職者が「この会社で働くイメージ」を持ちやすくなり、応募意欲の向上やミスマッチの防止にもつながります。
- 御社をひとことで表すと、どのような会社ですか。
- 御社で働く魅力ややりがいは何ですか。
- 社員がキャリアやスキルを高めるために取り組んでいることを教えてください。
- 転職を検討されている方へのメッセージをお願いします。
- 御社が求める人物像を教えてください。
コンサルタントへのインタビュー
コンサルタント自身の声を紹介することで、「どんな人がサポートしてくれるのか」という安心感を与えることができます。ただし、単に強みやこだわりを聞くだけでは印象に残りにくいため、具体的な転職支援のエピソードを深掘りする形で伝えるのが効果的です。
このインタビューは、「転職に成功した求職者へのインタビュー」をコンサルタント側の視点で語るものと捉えるとよいでしょう。
- ご自身の実績や得意な領域について教えてください。
- 面談を通して、求職者のどのような人柄や強みを感じましたか。
- 求職者の想いを企業側に伝える際、どのような工夫をしましたか。
- 面接対策ではどのようなサポートを行い、求職者や求人企業から面接後にどんなフィードバックがありましたか。
- 求職者の希望と企業側の提示条件にギャップに対して、どのように調整・交渉しましたか。
診断コンテンツ
診断コンテンツは、求職者が質問に答えることで「適職」や「市場価値」などを可視化できるコンテンツです。ゲーム感覚で楽しめる設計にすることで心理的ハードルを下げ、SNSでの拡散やSEO流入も期待できるため、集客からサービス登録への導線づくりに効果的です。
結果画面に「相談はこちら」と無料相談のボタンを入れたり、結果を一部だけ表示し「LINE登録して全部見る」というボタンを入れたりすることで自然な形でCV(コンバージョン)を狙うことも可能です。
設計次第で初回接触からCVまでを一貫して設計できるため、広告や自然検索に次ぐ新たな集客チャネルとしても注目されています。
アンケート調査コンテンツ
アンケート調査コンテンツは、「IT業界の採用活動における課題調査」や「20代の転職理由に関する求職者アンケート」のように業界や職種に関する最新動向や求職者・企業の意識を可視化し、独自性の高い情報発信ができるコンテンツです。
調査結果をまとめたレポート記事やホワイトペーパーに資料ダウンロードや問い合わせフォームを設置することで、リード獲得にも効果を発揮します。加えて、プレスリリースやSNS投稿と組み合わせることで、広範囲なリーチと被リンクの獲得も期待できます。
人材紹介会社がコンテンツマーケティングを成功させるコツ
コンテンツマーケティングは、記事を量産すれば成果が出るというものではありません。特に人材紹介会社においては、求職者の行動導線や心理を考慮した設計が欠かせません。また、記事だけに目を向けるのではなく、受け皿となるサイト構造やCVポイントの整備も含めた全体最適の視点が求められます。
ここでは、コンテンツマーケティングを効果的に機能させるための2つのポイントを紹介します。
コンテンツの導線設計を行う
コンテンツからの集客が成功しても、そこからいきなり「無料相談」や「LINE登録」などのCVに誘導するのは非効率です。求職者の多くは、まずは情報収集フェーズにあり、比較・検討を経てからアクションを起こす傾向があります。そのため、コラム記事から次の接点となるコンテンツへ、段階的に導く流れを設計することが重要です。
例えば、検索流入を目的とした一般的な転職ノウハウ記事から業種・職種に特化した記事、さらに転職成功者のインタビューや求人特集ページなど、ユーザーの関心が高まるタイミングに合わせてコンテンツを設計します。
このようにコンテンツ同士を意図的につなぎ、求職者の検討段階を一歩ずつ後押しする導線設計によって、サービスへの理解と信頼を自少しずつ築いていくことがですることができます。

▼コンテンツの種類については以下をご参考ください
バズ? SEO? コンバージョン? コンテンツのタイプごとの違いとは?
コンテンツ以外の施策にも目を向ける
集客用のコンテンツをどれだけ整えても、その先にあるサイト構造や受け皿が不十分では、成果につながりにくいという課題があります。
- 求人が探しにくい構造になっている
- 問い合わせフォームが使いづらい
- CVボタンの設置場所や文言が分かりづらい
といった問題は、ユーザーが行動を起こす直前での離脱を招く原因になります。実際、「記事からの流入は増えたのに応募数は伸びない」といったケースでは、コンテンツそのものよりも、サイトのUI/UXや導線設計がボトルネックになっていることが少なくありません。
そのため、コンテンツ制作と並行して、求人ページ・相談ページ・お問い合わせフォームなどの改善にも目を向けることが、コンテンツマーケティング成功のカギを握ります。
▼CVRを上げるための施策まとめは以下をご参考ください
コンバージョン率(CVR)を上げる62の方法 フォーム誘導率と完了率を改善
人材紹介会社のコンテンツマーケティング成功事例
LHH転職エージェント(アデコ株式会社)
背景
サイトエンジン主催のセミナーにご参加いただいたことがきっかけでした。
LHH転職エージェント様では、日本国内における認知拡大とWebサイトの流入数増加に課題を感じておられました。より効果的な集客と、継続的に運用できるコンテンツ体制の構築を目指し、弊社にご相談いただきました。
実施したこと
- 毎月7本のコンテンツを安定的に投稿
- キーワード選定、構成案作成、ライティング、図表作成、レポート作成までを一貫して支援
- 既存記事のリライトやインタビュー記事の企画・作成も実施
導入後の成果
- コンテンツ数はこれまでの3倍以上に増加
- サイト流入数は、提携開始前の2022年1月と比較して、月次で約4倍の成果を達成
- 当該サイトから本サイトへのコンバージョンにも大きく貢献
ポイント
- コンテンツの「量」だけでなく「質」も大幅に向上
- 毎月のレポートにより改善の優先順位や対応方針が明確になり、社内での意思決定もスムーズに
- 事業主・サイトオーナーの視点に立った戦略的なPDCA運用ノウハウの共有が、想定以上に役立ったとの声も
エンジニア特化の人材紹介会社様
背景
広告や求人データベースでの集客が今後頭打ちになることを見越し、自社サイト経由での集客比率を高める必要性を感じていました。将来的なマーケティングコストの最適化を視野に、コンテンツによる安定的な流入を確保したいというご要望をいただきました。
なお、ITエンジニアではなく、機械系など特定分野のエンジニアに特化しているため、専門性の高い情報設計が求められました。
実施したこと
・施策開始初月から2か月間で、合計70本の新規コンテンツを集中的に制作
・その後も毎月、新規記事5本、リライト2本、インタビュー記事2本を継続的に作成
・競合調査からSEOキーワードの設計、製作、レポートまでを一括支援
導入後の成果
- もともとの検索母数が少ないサイトだが月間流入数は4ヵ月で、3,000から13,000超へと大幅に増加
- コンテンツ経由の成約率が高く、全体の成約数増加にも寄与
- 公開から日が浅い段階でも流入が継続して増加しており、今後のさらなる伸びが期待される
ポイント
- 初期段階で大量かつ高品質な記事を整備したことで、短期間で検索経由の安定的な流入を確保
- コンテンツ制作と同時にカテゴリ設計や特集ページでの導線設計も行い、サイト全体のユーザー体験を最適化
- 社内でのCV改善やカテゴリ整理の意思決定もスムーズに進み、メディア全体の方針が明確になったとのフィードバックあり
人材紹介会社のコンテンツマーケティング支援ならサイトエンジン
人材紹介会社のコンテンツマーケティングでは、単に記事を制作するだけでなく、求人情報やCV(コンバージョン)を意識した戦略設計が欠かせません。求職者の情報収集行動や検討フェーズに応じて、適切なタイミングで自社の魅力や専門性を伝えていくことが成果につながります。
サイトエンジンでは、これまで多くの人材紹介会社をご支援してきた実績があります。検索流入の最大化から応募・登録につなげる導線の構築、コンテンツ設計・制作までを一貫対応することでサービスの特性や強みに合わせて、集客だけでなくCVにつながる戦略をご提案します。
また、社内でのコンテンツ制作体制を整えたい企業様向けに、企画・キーワード選定・編集体制づくりなどの内製化支援も行っています。継続的な発信を可能にし、自社の資産として運用できる仕組みづくりまでサポートいたします。
「広告に依存しない集客チャネルを育てたい」「コンテンツ運用を仕組み化したい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。貴社に最適な形で伴走いたします。