BtoBの製造業が継続的な発展と成長を続け、安定した利益を確保するには、リードジェネレーションが不可欠です。予測可能な成長を実現するのは、インバウンドでリードが増えていく状態を作る必要があります。本記事では、BtoB製造業にリードジェネレーション施策が不可欠である理由や主な手法、成功事例などについて解説します。
リードジェネレーションとは
リードジェネレーションとは、リード(見込み顧客)を獲得することです。BtoB製造業ではWebサイトを見て購入を即決することはほぼなく、まずは資料請求、お問い合わせをして、相見積もりなどしたうえで社内稟議を通して意思決定されます。探し始めてから購入までの検討期間は15~90日程度が多く、長い場合だと1年以上になることもあります。つまり、情報収集がはじまった段階でどう認知してもらって、候補のうちの1社に含めてもらえるかが重要です。
リードジェネレーションの手法は、オフラインとオンラインの2種類があります。オフラインの手法としては、展示会への出展、セミナーの開催、飛び込み営業などが代表的です。自社のターゲットと直接的なコミュニケーションを図り、取得した顧客情報をのちの営業活動などへ活かします。
オンラインの施策には、オウンドメディアやSNSの運用、インターネット広告、ウェビナー、ホワイトペーパーの配布、メルマガなどが挙げられます。
担当者名やメールアドレス、電話番号といったリードの個人情報を取得し、営業担当による電話での後追いやメルマガなどによる情報発信で、少しずつ顧客のニーズを掴んでいきます。
製造業のマーケティングの現状
市場や顧客のニーズは多様化の一途をたどっているほか、ものづくりの技術もますます進歩しています。このような状況のなかで生き残り、成長と利益の拡大を実現するには適切なマーケティングへの取り組みをして、新規顧客を獲得し続けることが不可欠です。
新規顧客がなく、特定の会社に売上を依存している状態は安定とは遠く、価格交渉力などがない状態になってしまいます。継続的に新規の引き合いがくるようになり、頻繁に商談や受注が発生していれば、経営が安定します。
少数の取引先が売上構成比のほとんどを締めている状態は、不測の危機にも弱いです。たとえば、リーマンショック、コロナといった社会的な変化や、主要取引先の地震・火災やサイバー攻撃による操業停止など、予想もつかない突然の事件で大きな被害を受けてしまいやすくなります。
リードジェネレーションの主な手法
リードジェネレーション手法として代表的なのは、オウンドメディアの運用やSNSマーケティング、コンテンツマーケティング、ウェビナーの開催などです。
1. コンテンツマーケティング
オウンドメディアやSNSなどで顧客にとって役に立つ情報を継続的に発信して、見込み客の認知や関係性を獲得していく施策をコンテンツマーケティングといいます。
オウンドメディアとは、自社が直接運営しているメディアを指します。自社のWebサイトやメールマガジン、ブログなどのほか、製品カタログやパンフレットなどが該当します。
近年主流なのは、オウンドメディアを活用したリードの獲得です。Webサイト上で、製品や会社の紹介をするだけではなく、製品の選び方や使い方などの客観的なノウハウなどを積極的に発信することで、リードを獲得する点が大きな特徴です。
ユーザーに有益な情報を発信することで、認知度をアップするとともに、自社に良いイメージを抱いてもらえたり、商品やサービスへの関心を高めたりといった効果が期待できます。
動画共有サイトなどを含めたSNSなどで自社や製品の紹介をすることで認知度を上げることができます。たとえば工作機械などを販売するときに、動いている様子を動画に収録してYouTubeやTikTokにアップロードするといった施策が考えられます。特に動きのあるものはテキスト+画像で説明してもすべては伝えられため、動画で伝えることが有効です。加工の様子などを収録して、自社の技術力の高さをアピールするような動画の使い方もよくあります。BtoBなのにSNS・動画サイトなどで問い合わせなどが本当に来るのか疑問という方は、YouTubeやTikTokで関連した動画を検索して、再生回数を調べてみてください。他社の取り組みでどれくらい動画が再生されているか規模感がわかります。
自社と製品の紹介だけをしているWebサイトには、すでに自社に興味関心のある人しか見にきません。オウンドメディアやSNSを運用することで、まだ自社や製品については知らないが、製品のカテゴリについて調べている、興味があるという人たちを集められます。これまで自社とほとんど接点がなかった層ともつながることができ、リード獲得に有効です。
2. 展示会
BtoB製造業のマーケティングでの代表的な施策としては展示会の出展があります。展示会に1日参加して、名刺で数百枚、商談数件~10件くらいを獲得するような数値感です。興味を持って調べに来ている人たちが多数来場するため、認知度を上げることにも繋がります。
販売している製品によっては、製品や機材を持ち込みその場でデモすることができるので、来場者に製品の特徴やメリットをわかりやすく伝えられます。
最近ではオンラインの展示会もあります。日本全国に商圏を広げたい方は検討してみるとよいでしょう。
3. 手紙やメールなどのダイレクトメール(DM)
購入する企業の属性が明確な場合、手紙やメールなどでDMを送るのも有効な方法となりえます。自社製品を購入してくれる部署や役職などを確認して絞り込んだ宛先で実施します。理想をいえば担当役員の実名などを調べて、個別に文面を考えて連絡できれば高い反応率となります。
手間やコストはかかりますが、他の方法と比べると能動的に情報を探していない人も含めて対象にできるという意味で、拡張性が高く大きく売上を伸ばせる可能性がある施策です。
4. ウェビナー
ウェビナーとは、オンラインを介して配信されるセミナーです。インターネットやITツールが普及し、開催のハードルが低くなったことから、近年では多くの企業がウェビナーを開催しています。
ウェビナーの魅力は、低コストで多くのユーザーへ情報を発信できる点です。一般的なセミナーのように会場を用意する必要がなく、参加者の制限もありません。スタッフも必要最低限の数で運営できるため、コストを抑えて効果的なマーケティングを実現できます。
ウェビナーであれば、遠方のターゲット層にも情報を届けられます。これまで接点がなかった層にもアプローチできるようになり、効果的なリード獲得が可能です。ただ、通常のセミナーのように、参加者が製品を直接手にとって見る、触るといったことができないため、製品が動いている様子を動画で見せるなど、直接触れずとも製品の魅力や特徴を理解してもらえるような工夫が求められます。
BtoB製造業のリードジェネレーションの成功事例
事例1:課題別のランディングページを用意し、リスティング広告を使い確度の高いリードを獲得
A社は、顧客になってくれそうな企業へ電話をかけて商談につなげるテレアポと、展示会への出展をリード獲得手法として長らく営業活動をしてきました。これらの手法で獲得したリードは案件化までの時間が長くなることが多く、フォローに多くのリソースを費やさなくてはいけないこともあり、一部が追いきれずに抜け落ちてしまうという課題もありました。そこで、A社はオンラインでの新たなリード獲得にのりだしました。
具体的には、同社はWebサイトの改善に取り組みます。いままで自社製品をカタログのように並べているページを中心になっていたところを、広告出稿をするためにランディングページを別途作りました。課題別のランディングページを制作し、製品サンプルや製品資料を請求できる仕組みを用意しました。そして、リスティング広告(検索エンジンの検索結果画面に表示される広告)を出稿しました。その結果、これまでは月に1件あるかないかといった程度の問い合わせだったのが、毎月安定して10件前後入ってくるようになりました。また、検索エンジンで調べ物をしている課題意識が明確な人たちからの問い合わせになったことで、テレアポや展示会で獲得したリードと比べて商談化率が高く、かつ購入の検討期間が短くすぐに意思決定をしてもらえる商談が増えました。
事例2:Webサイトにお問い合わせ以外のゴールを増やして成約率アップ
B社の自社サイトには、お問合わせフォームだけが設置してあり、月に数件だけポツポツと問い合わせがある状態でした。
お問い合わせしてきたお客様の要望に、製品のスペックや価格などを知りたいといったものが多かったため、製品カタログをPDFで用意して個人情報を入力すればダウンロードできるようにしたところ、リードが増えて月10件程度入ってくるようになりました。成果が出たのでさらに顧客からよく相談を受ける課題をどう解決するか方法をまとめた資料を作成したところ、さらにリードが増えました。
新しい経路のリードにより、いままでのお問い合わせと比べると導入までの期間が長い商談が増えたので後追いをするために、B社はメールマガジン配信サービスを契約しました。その結果、メールがどれくらい開封されているのか、顧客がどういった反応をしているのかなども把握できるようになり、個々に応じた適切なアプローチを行えるようになりました。
製造業のリードジェネレーション成功のポイント
やみくもに取り組んでもリードジェネレーションは成功しません。製造業を営む企業が効果的にリードを獲得するため、いくつかのポイントを把握しておきましょう。
リード獲得の目的・対象企業を明確にする
リードジェネレーションを成功させるには、目的やターゲットの明確化が重要です。ターゲットによって、適切な訴求方法が異なるためです。たとえば、大企業と中小企業では情報収集や意思決定の流れは違います。
獲得したい層が明確になれば、使用すべきメディアやコンテンツの内容なども決まります。この部分が明確になっていないと、訴求をしても誰に何を伝えたいのかがはっきりとせず、結局誰にも響かず成果にもつながらない、といった事態になりかねません。
全社で連携した取り組みにする
部門ごとにリードを獲得して、別々に情報を管理するのは大きな機会損失や無駄が発生します。たとえばA事業部が獲得したリードの中には、B事業部の製品もあわせて検討する企業があるかもしれません。それにもかかわらず、A事業部の予算で獲得したリードなのでB事業部には触らせないみたいなルールにしてしまうと、機会損失が発生します。
また、顧客とのやり取りの履歴管理を共通化しておかないと、顧客にストレスを与えてしまうきっかけになりえます。たとえば、A事業部が直近で繰り返し商談している顧客に対して、まったくそれを知らないB事業部の人が今までやり取りを考慮せずに連絡してしまえば、顧客は社内の情報共有の体制はどうなっているのかと不安に思うかもしれません。B事業部の担当者はせめてA事業部の担当者とは認識をすりあわせしておき、「A事業部といまやり取りしていただいているかと思いますが、こちらの製品も貴社の役に立つと思ったので連絡させていただきました」などと伝えるような配慮はすべきです。
社内の仕組みやルールが当たり前になっているせいで、自社の都合を顧客に押し付けていないか注意が必要です。
事業部ごとにデータの貯め方がバラバラになるのも後日問題になってしまう可能性があるポイントです。リードそれぞれについて収集している情報の項目(社名、業種業界、役職、企業規模、年商、電話番号、メールアドレス、支店・支社情報など)が異なっていると、いざ統合しようとなったときに名寄せなどに工数がかかりますし、適切なマーケティング施策が打ちにくくなります。
リード獲得後のシナリオを用意しておく
リードを獲得したあと、どのように製品の購入へ結びつけるのかを考える必要があります。何回電話するのか、電話が繋がらなければどんな内容でメールするのか、メールは何回送るのかなど、ルールとして決めておきましょう。ある程度リード獲得数や売上貢献が見えてきて、リードジェネレーションにかける予算が増えてくると、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスのようにチームを分けて役割分担をすることが多いです。チーム間でどう連携するのかきちんと決めておき、宙に浮いてしまう仕事が発生しないようにしましょう。
獲得したリードが、即商談につながるとは限りませんので継続的に連絡する仕組みにしておくことが欠かせません。多数のリードを長期間追い続けるのは、人力でやるとヌケモレがどうしても発生してしまうため、ある程度リード数を確保できるようになってきたときには、マーケティングオートメーション(MA)やSFA/CRMなどの適切なツールの導入を検討してください。
高価格帯の製品を販売していて、顧客あたりのLTV(生涯価値)が企業であるほど、1件のリードを追い続ける価値が高いです。このような層を放置するのではなく、継続的なアプローチを行うことによって、いつか購入につながる可能性があります。
リード獲得あたりの単価ではなく、受注数や売上や利益まで追う
企業の最終的な目標は利益の確保、拡大です。リード獲得がゴールではありません。そのため、リードジェネレーションでは施策ごとの売上・利益貢献まで追うことが大切です。リード獲得あたりの単価だけを見て予算配分を意思決定してしまうと、成果が出ていない施策に予算大きく割り当てることになりかねないので注意しましょう。たとえばコスト100万円かけてリード100件、売上200万円の施策Aと、コスト200万円かけてリード20件、売上1,000万円の施策Bがあったとして、売上まできちんと追えていなければ、施策Aのほうが評価は高くなってしまうかもしれません。ここでいうコストには広告費・外注費・人件費などすべてを含みます。社内人件費を考慮してできるかぎり正確な顧客獲得あたりの費用(CAC)を算出してください。
特にリード獲得から受注までの平均期間が長い製品でこの問題は発生しやすいです。また、マーケティングと営業が機能別組織になっており、それぞれが追うKGI/KPIが分断されていることでも発生します。
まとめ
BtoB製造業においては、検討期間が長く、顧客単価も高いことからリードジェネレーションは不可欠です。リード獲得にどのような方法があるのか正しく理解し、目的やターゲットの明確化とリード獲得後のアクションまで含めたリードジェネレーションを考えていきましょう。