カスタマージャーニーマップは、ユーザーがどのように考え、どのような行動をとってサービスの利用や、商品の購入に至るかを時系列に並べたマップです。
コンテンツマーケティングにかかわる方にはなじみ深いマップですが、いざ作ろうとすると「どのようにステップを区切ればいいかわからない」「ステップごとのアプローチ方法が思い浮かばない」といったお悩みをよく聞きます。
そこでおすすめなのが、自分の体験をもとにしたカスタマージャーにマップの作成です。以前、自分自身をもとにペルソナの作成をする、という練習法をご紹介しましたが、(https://www.siteengine.co.jp/blog/persona-training/)今回はその続編となります。ぜひチャレンジしてみて下さい。
カスタマージャーニーマップはペルソナのパートナー
カスタマージャーにマップとは何か、という内容はこちらの記事に譲ります。動画もあるので、「カスタマージャーニーマップとは何か」が知りたい方はぜひ見てみてください。
「カスタマージャーニーマップの目的と作り方[動画解説あり]」(https://www.siteengine.co.jp/blog/customer-journey-map/)。
さて、前回は、「ピザ窯を購入した」という自分の体験をもとに、ピザ窯を売る側の立場として、自分自身をもとにペルソナの作成をしてみました。(https://www.siteengine.co.jp/blog/persona-training/)しかし、ペルソナだけでは、どのような情報をどのような接点から提供すればよいか、というアクションプランを作るのが困難です。そこで活躍するのが、カスタマージャーニーマップです。
これを使えばユーザーに合わせたアクションプランが設計できます。
ということでさっそく制作してみましょう。
前回のおさらい~作成したペルソナ
サイトエンジンで働く橋本は、二人の息子を持つお父さん。最近はコロナの影響で休日の外出もほとんどできず家族と過ごす休日が味気ないものになってしまったと感じている。せめてドライブにでも、と出かけた先で見かけたピザ職人がピザを焼く姿。ビビッ!ときた橋本。家族でピザづくりをしたら、みんなが笑顔になるのではないか、と思い、ピザ窯の購入に向かって動き始める…という体験談です。
詳しくはこちら(https://www.siteengine.co.jp/blog/persona-training/)
前回作ったペルソナは以下の通りです。これに合わせてカスタマージャーにマップを作成してみます。
要素 | 詳細 |
基本情報 | 橋本直矢 40代 男 ウェブマーケティングの会社の会社員 神奈川県 横浜市在住 |
家族構成 | 妻・パート ・27歳で結婚。 子供2人・どちらも小学生。 |
生活 | 横浜の持ち家に奥さんと男の子2名の4人家族で暮らしている。 奥さんも自分も実家が近く、市内にそれぞれの父と母が暮らしている。行き来は頻繁で、一緒に出かけたり、食事をとったりしている。 |
趣味 | 釣り、キャンプ、映画鑑賞、サッカー、ゲーム |
休日 | 週末は子供のサッカー見学とたまに一緒にサッカーをする。年に何度か近所の家族と山や川にキャンプに行く。 夏は家族で海にいき、シュノーケリングや磯遊びをする。 最近は近所のお父さんたちに教わりながら釣りも初めて、子供と一緒に釣りに行っている。 ゆっくりするより家族と一緒に全力で遊びたいと思っている。その為、家族と一緒に楽しめるものが趣味になっている。 サッカー以外は家族ができるまでほとんど経験がなかった。 コロナによる自粛で家遊びに飽きてきたので、早くコロナが収まればいいと思っている。 |
食事 | 外食は月に2~4回程度。食にはあまりこだわりがない。 在宅ワークの為、自宅で食事をすることがほとんど。デリバリーもたまにしか使わない。なんでもおいしく食べられる。お酒が飲めない。タバコも吸わない。 |
情報収集 | 情報収集の方法は人との会話、Twitter、ネット、YouTube。 テレビはほとんど見ず、新聞は取っていない。 |
SNS | LINEで親しい人とコミュニケーション。Twitterで情報収集。Facebookは友人の発信情報をたまに見る程度。 |
カスタマージャーニーマップのシートを用意する
まず用意するのはこのようなシート。右に向かってユーザーの行動を時系列に作っていきます。
縦軸には
・ステージ
・顧客の行動
・顧客感情の変化
・顧客との情報接点
・キーワードの例
・コンテンツの例
を設定しました。コンテンツマーケティングを意識してキーワード例やコンテンツ例が入れてあります。
重要なのは、顧客のペルソナを意識しながら、実際の顧客の行動や感情の変化をできる限り明確に、具体的に設定することです。横軸、縦軸は「この項目でなくてはいけない」ということはありません。サービスや商品によってはステップが複雑だったり、極端に短かったりする場合もあります。実際の顧客行動に合わせて設計しましょう。
「横軸は 認知 情報収集 比較 検討 の順番で・・・」というように、特定のフォームに従って無理やり行動をあてはめたり、他の資料と同じフォーマットで無理に作ろうとすると、実際のペルソナの行動から乖離したものができてしまうので注意が必要です。
ということでリアルなカスタマージャーニーマップを作っていきましょう。
購入までの一連の流れ
まずは自分の一連の流れを思い起こしてみます。
1.コロナであまり出かけられない。その為、家族と過ごす休日のイベントが減ってしまって残念に思っている。どんな風に過ごしたらいいかをネットで探したりしていて、子供とやるDIYなど情報を集めていた。
2.外出先で訪れた、家族だけで貸し切りになってしまう小さなレストラン。そこで、ピザ職人に直接ピザを焼いてもらい食べるという経験をした。子供達も目を輝かせていた。そのピザ窯は小さく、持ち運びできるようだった。
3.家族でピザづくりをしたら楽しいのではないかと思い、ピザ窯が用意できないか調べてみた。インターネットで調べたところ、キャンプにも持っていけるような組み立て型の既製品を買う人と、DIYで作る人がいることが分かった。さらに気になるところを調べていった。価格はどれくらいなのか、サイズや重さはどれくらいなのかといったスペックの問題もあれば、熱くなるがどこに置けばいいのか、近所迷惑にならないかといった利用上の問題などを調べた。調べるほどにピザ窯を手に入れることは素敵に思えてきた。
4.購入することを決意し、既製品と手作りの比較、既製品の中でもブランドごとの比較をした。
5.ホームセンターで取り寄せることができるものもあった。現物を見てから買うか、ECで買うか悩みぬいた。
6.結局ECで購入。購入のポイントは迅速に手配できることだった。数件のECサイトを見て実際に注文をした。
7.商品を待ちつつピザづくりの準備。ピザ生地の素材を手配したり、具材を用意したり…クックパッドなどのいろんな人の投稿レシピが役立った。ピザ生地は製作にあまり時間をかけ過ぎたくなかったので、業務用で評判のいい冷凍ピザ生地を購入した。
8.ピザ窯が届き、ピザの材料もそろったので、さっそくピザ作り。YouTubeで作り方の動画などを見ながら作ってみました。具材が多すぎてうまく窯の中で回せず失敗したり、窯の温度が下がってしまって焼くのに時間がかかったり…最後にうまくできたときは大歓声で家族みんなが笑顔でした。
9.苦しい後片付けの後は、今後のために温度管理の方法や、窯でのピザの回し方、新たなレシピなどの情報を収集。次回が楽しみです!
以上の流れをマップに起こすと、以下のようになります。
実際に自分が購入した際の行動なので、簡単ですね。
どうでしょうか。なかなかリアリティのあるカスタマージャーニーマップができました。
(画像が小さく見えない方は、クリックして拡大表示をしてください。)
次に接点を書き出してみましょう。例えば、ピザ窯に興味が出て、リサーチをした時。様々なキーワードで調べてみました。BE-PALのDIY記事を読んだり(https://www.bepal.net/diy/119042)、Twitterの投稿を見たりしました。
購入の際に販売店から受け取ったメールも、情報の一つです。そこにはいつ商品が発送されて、いつ届くのか、という重要な情報が記載されているからです。
ピザを作る際は、YouTubeでピザ窯のブランド公式サイトの動画を見たり、他の方が自作のピザ窯でピザを焼くところを見て研究しながら焼きました。
こうした、自分がどのようなところから情報を集めたのか、どのように情報が届いたのか、といったポイントを一通り書き上げます。
これでベースは完成です。
ペルソナがあればたくさんの可能性が見つかる
ここからはペルソナをもとに、情報の幅広げを行っていきます。例えば「商品の認知」です。私は偶然入ったレストランでピザ窯に出会ったわけですが、普段インターネットで情報収集をしているので、私のような体験をした方のブログがあれば、それを見て心を動かされるかもしれません。ペルソナは家族とよくキャンプに行くので、外出先のキャンプ用品を取り扱う店舗で、素敵な家族の写真と共に展示されているピザ窯を見かけるかもしれません。
Twitterで情報収集をしているので、キャンプ系のインフルエンサーがピザ窯を使っている投稿でピザ窯に目をとめるかもしれません。
このように、ペルソナを軸に「このペルソナならもしかしたら・・・」という接点の幅広げをしていきます。
幅広げをしたものがこれです。
ここで重要なポイントはペルソナに合わせた設定を選ぶことです。
例えば商品の認知。ペルソナは情報収集のメインをインターネットにしており、新聞を取っていません。商品認知の方法の一つに新聞広告がありますが、このペルソナに対して新聞広告を出しても効果がないと考えられます。広告費としてお金を使うのであれば、インターネットのリスティング広告や、Twitterの広告が有効だと考えられます。
商品認知や、ピザづくりの際の接点として、料理雑誌や料理のレシピ集のような本も考えられますが、ペルソナに料理の趣味はありません。その為、こうした本に広告出稿したり、掲載されることはペルソナへのアプローチとして効果は低くなってしまいます。ペルソナは料理に興味があるのではなく、家族と楽しく過ごす時間を作ることに興味があるのです。
ここで料理雑誌を入れてしまうと、料理の雑誌なのにピザの作り方や味にこだわらず、家族と過ごす時間にばかりフォーカスしたコンテンツをのせるという的はずれなアプローチになってしまいます。
ペルソナが「料理好きで本格的なピザづくりに挑戦したいと思っている」というペルソナで、情報収集の方法に本が含まれるのであれば商品認知やピザづくりのステージでの接点として本や雑誌を入れることができます。
接点のポイントが明確になれば、アクションプランが浮かびます。
Twitterを使った情報発信や、ウェブコンテンツの作成、キャンプ系の情報サイトへの広告出稿など、具体的にどのようにペルソナにアプローチをしていくか決めましょう。
カスタマージャーニーマップの完成
最後に今回はコンテンツマーケティング用なので、それぞれのステージに合わせたコンテンツの例と、ペルソナのステージに合わせたキーワード例を用意しました。
このように、各ステージに合わせて、最適なコンテンツを制作することで、ユーザーを最終的なコンバージョンへと導きます。上記のカスタマージャーニーマップの作成にかかった時間は40分ほどです。実際に自分の体験をもとに書くので、あまり時間がかからずに済みます。ペルソナを踏まえてどのようにカスタマージャーニーマップを作ればいいのか、という練習には最適な方法です。
まずは自分の体験をもとに、作成の流れを学ぶことをおすすめします。
今回はカスタマージャーニーマップ作成のための練習法の紹介でした。
カスタマージャーニーマップの作成は顧客理解を深め、的確なアクションプランを作成するためにも重要な作業です。取り組んだことがない、という方はぜひ取り組んでみてください。